テレワーク企業NOW

太田肇 著『日本人の承認欲求 テレワークがさらした深層』(新潮新書)

2022年4月18日発売
ミラッキ 2026.02.27
誰でも

コロナ禍がはじまったのが2020年4月。

「新型インフルエンザ等感染症(いわゆる2類相当)」から

「5類感染症」になったのが2023年5月。

その3年の間に定着した言葉「リモート」そして「テレワーク」

2022年の段階では就業者の25%がテレワーク対象者で

夏にNTTグループが「リモートワークを基本とする新たな働き方の導入」を

発表している。

徐々に「出社勤務に戻す空気」を醸成する企業と

「原則テレワーク」に舵をきる企業が混在した時期と記憶している。

ちなみに大手芸能プロダクションのアミューズが

東京・渋谷から山梨県の西湖に本社を移転したのは2021年7月だった。

同志社大学教授の太田肇さんによると

「日本の会社は”見せびらかし”の場で、

 それゆえテレワークから出社勤務に戻したがった」とのこと。

誰が何を見せびらかすのか。

出世した人が自分の「偉さ」を見せびらかす

大部屋で仕切りのないオフィスを好み、

稟議制やハンコ文化を残しつつ、職場の飲み会に積極的なのは

「管理職の権力を見せつける」という目的。

会議の削減や効率化、テレワークを渋るのは

管理職の権力を見せつける機会が減るから。

グローバル企業の多くは仕切りがあるが、

日本は上司も大部屋で働く。

同じ部屋にいると、部下は上司の視線や言動を

いつも気にしていなければならない。

それが上司の承認欲求を満たすという。

テレワークでは満たされない。

体格が良くて声が大きく、周りを威圧するような存在感があった人は

リモートになると目立たなくなり、

それまでおとなしくて影が薄かった人が気後れせずに主張するようになった。

その結果、ひとりひとりの能力や貢献度がはっきり見えるようになった。

その一方で「お金以外の報酬を得ていないむなしさを感じる」

と語る人もいたとのこと。

欧米では、「会社は『働いて収入を得る場所』」と割り切り、

情緒的な満足は社外の家庭やコミュニティの中で味わおうとしている人が多く、

会社の人間関係の中で積極的に承認欲求を満たそうという意識は比較的低い

しかし、日本はその逆で、

強制されなくても休暇を消化することなく残し、当たり前のように残業することで

見返りとして会社や上司・同僚から「承認」を得ようとする。

金銭の代わりに承認を受け取っている。

上司だけでなく部下もまた、

金銭だけでは満足できない体にさせられているというわけだ。

「現場の生産性を上げる話」は

ツールやシステムの導入話になりがちだが、

まず「誰かから承認されるための動き」を省くところからではないか。

テレワークは、強制的に「誰かから承認されるための動き」の

意味を消去し、おのおのが効率的と思えるやり方を模索、

実行できるチャンスを与えてくれた。

「密を避けましょう」と言っていた時とウイルスの脅威は変わらないが、

2026年現在、毎朝、満員電車が走っている。

「生産性」もまた「満員電車型」に戻ったのだろうか。

放送作家は放送局から放送局へ、

スタジオからスタジオへ、会議室から会議室へと渡り歩く。

同じ部屋で上司がずっと作業していて、

「あの人に認められよう」「機嫌をとろう」

という動きをしなくてすむ。

生放送なり収録なり、企画会議なり

目的のために集められ、目的を達成したら解散し、

また別の場所へと向かう。

そのため、評価基準は「数字」「結果」。

目的を達成した「数字」と「結果」が

目に見える形で出なければいけない。

それらを残すことで、違う放送局、

違うスタジオ、違う会議室へ入ることが認められる。

そこで、新たな出会いと新たな仕事が待っている。

「ジョブ型雇用」「メンバーシップ雇用」でいうと放送作家は前者。

組織人ではないからこそ、その利点は活かすべきで、

同時に、組織外の人間だからこそ、組織をよく知り、

搾取されないこと、組織に組み込まれないことが重要になる。

このようなことは、誰が教えてくれるわけでもない。

メディアの専門学校でこういう話が出るだろうか?

その都度その都度、気づいていくしかない。

しかし、フリッパーズギターは

「ラブ・アンド・ドリームふたたび」という曲で、こう歌っている。

気づくのはいつでも過ぎた後だろう

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